日本製品はソーシャルバイヤーを通じスマホで買う。そんな動きが広がっている(写真:阿杯さん提供)
日本製品はソーシャルバイヤーを通じスマホで買う。そんな動きが広がっている(写真:阿杯さん提供)
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2018年買った日本製品ランキング(AERA 2019年2月4日号より)
2018年買った日本製品ランキング(AERA 2019年2月4日号より)

 団体で電気街を訪れ、家電を爆買いするのは昔の話。中国インバウンドニーズに変化が起きている。カギはSNSだ。

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 ある朝、阿杯(アベイ)さん(25)のスマホに、メッセンジャーアプリ「WeChat(微信)」経由で連絡が入った。相手は中国在住の常連客の女性だ。

「先日買ったコスメ、使ってみたら感触がすごくよかったの。友人に教えてあげたら、彼女も興味を持ったみたい。彼女のためにもう一度、商品の説明と使い方も教えてください」

 数カ月前、この女性が指名買いしたのは、日本のメーカーの角質を落とすクレンジング。さっそく、阿杯さんはメーカー公式サイトに飛び、商品説明や使用方法を調べた。画像もつけて日本語から中国語に意訳して伝える。すると、女性からのリピート注文と、その友人からの新規の注文を受注した。

 阿杯さんは、中国在住の顧客から日本製品を受注して日本で買い付ける「ソーシャルバイヤー」だ。来日して4年になるが、はじめは片手間に行っていたこの仕事にやりがいと手ごたえを感じ、2年ほど前に事業化。現在は、月に400回ほど取引を行い、2千万円ほどを売り上げる。うち10%程度が純利益だ。

 いま、中国人が日本製品を買う流れに大きな変化が起きている。団体で来日して爆買いするのは昔の話。多くは阿杯さんのようなソーシャルバイヤーを通じて、SNSで手に入れているというのだ。中国人消費者のトレンド情報を紹介する専門メディア、中国トレンドExpress編集長の森下智史さんは言う。

「ある中国企業の調査によると、日本製品の購入経路が日本旅行での買い物という層は、約25%に過ぎません。中国ECサイトで購入する層が35%、最も多いのがソーシャルバイヤーなどを通じSNSで購入する層で、40%を占めています」

 日本で約45万人のソーシャルバイヤーが活動し、年間数千億円を流通させているという。

 2年前に来日し、現在は日本語学校に通うJoyouさん(25)もソーシャルバイヤーをしている。学業優先のため、取引は月200回程度だが、500万円を売り上げたこともある。

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