米軍普天間飛行場の返還をめぐる問題は昨年末、国が移設先とする「辺野古」への土砂投入に着手。沖縄県民が求める「対話」を踏みにじり工事が進む。電子署名で国際的注目が集まる中、民意と離れた政治にどう歯止めをかけるのか。
【「We the People」での署名を呼び掛けた主なタレント・文化人はコチラ】
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沖縄・辺野古の海に初めて土砂が投入された昨年12月14日の夕暮れどき。グラスボートに乗り込んだ若者たちが笑顔を弾けさせながら、約50個のカラフルな風船を海上にたなびかせた。
緊迫の海域で「アトラクション」と見まがうパフォーマンスを敢行したのは、昨年9月の沖縄県知事選で玉城デニー知事を支援した若者たちだ。
「愛の埋立してきました!」
「暴力の埋立に負けない」
フェイスブックに風船パフォーマンスの動画とメッセージを投稿したのは那覇市の徳森りまさん(31)だ。
埋め立て海域に近づくと、抗議市民を監視する警戒船が近寄ってきた。このとき徳森さんたちが風船を持ちながら手を振ると、乗員が手を振り返した。
「一瞬の出来事でしたが、とても心に響きました。いつもは威圧的なのに、やり方を変えたら相手の反応も変わってくるんだなあって」
翌日、玉城知事が米軍キャンプ・シュワブのゲート前を訪れた。出迎えた市民の多くは、沖縄の本土復帰運動の頃から労組の集会などで歌い継がれている「沖縄を返せ」を合唱した。
「いつものパターンになってしまう」。そう感じた徳森さんは約20人の若者で玉城知事を囲み、「政府のやり方に負けず明るくやっていきましょう」と呼び掛け、知事選で玉城氏支持のシンボルとなった人さし指と小指を立てる「デニってる」のポーズを宙に掲げた。笑顔の写真が全国紙を飾った。
「イメージって大事。笑顔は強さだし、みんなが求めている。怒ってこぶしを突き上げるばかりではなく、明るさをもっと『見える化』していけば運動のイメージも変わるはず」
徳森さんは玉城氏の知事選でネガティブキャンペーンではなく「ポジティブキャンペーン」を提唱した一人だ。背景にはこんな思いがあった。
「ウチナーンチュ(沖縄の人)は笑顔や元気の才能がある。悲しみや怒りを先に持ってくるのでなく、仲間を増やす方向にエネルギーを使う方がいい」
●少数派のつらさを知るから分断を乗り越えられる
知事選ではSNSなどを使い、玉城氏の明るい人柄や政策のポイントをわかりやすく発信し、玉城知事誕生に大きく寄与した。徳森さんは言う。
「マイノリティーのつらさを知る沖縄だからこそ、分断や悔しい気持ちを乗り越えて勝つためにポジキャンができるんです」