

起業家といえばパワフルでメンタルも人一倍強そうだが、実は心を病むリスクが高い。多忙で極度のプレッシャーを抱える彼らに特化した、メンタルヘルスサポートサービスが始まった。
【グラフをみる】衝撃的な数字が…。起業家はこんなにも心を病んでいる
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華々しいサクセスストーリーの裏でほとんど語られてこなかった、起業家のメンタル問題。
こんなデータがある。日本の起業家の37%に、うつ病・躁うつ病(双極性障害)などの気分障害や、パニック障害などの不安障害の疑いがある。その数値は、非起業家の約7倍──。
2017年にこの調査を行ったのは、自らも起業家でウェブ開発の「ゼロベース」を経営する石橋秀仁さん(40)。石橋さんもメンタル不調を経験した。
「社員の半数近くが辞めてしまった時は本当につらかった。周りの起業家でも、口には出さないもののつらそうな人をたくさん見てきました」(石橋さん)
米国では起業家の7割がメンタルの不調を抱えているというデータもあるが、石橋さんは国内には関連データさえないと知り、医学部生の協力を得て、自らネット上で調査した。
「予想を上回る数字で、より精度の高い調査や支援が必要だと実感しました」(石橋さん)
その支援の第一歩が18年11月末に始まった。オンラインカウンセリングのcotree(コトリー)が、起業家向けにメンタルヘルスのサポート事業「escort(エスコート)」を開始。社長の櫻本真理さん(36)は言う。
「起業家は従業員にも投資家にも常に強い自分を見せようとして、誰にも本音を言えないという人が少なくありません」
櫻本さんによれば、起業家がメンタルの問題を抱えやすい要因はいくつもある。プレッシャーや睡眠不足に加え、多忙で家族との関係がギクシャクし、安心できる「居場所」がないケースもある。そもそも衝動性・多動性が強いなどメンタル面でハイリスクな人が起業を選びがちという側面もあるという。
「尖った発想ができる半面、共感力が弱く、自分が潰れない代わりに社員を追い詰めてしまうケースもあります」(櫻本さん)