マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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 ドラマで日がな一日撮影所にいる。出演者が7人もいるが、ほぼ中年男で、合間に下ネタしか話していないし、中身を覚えていない。書ける内容ではないので、今回は出身地についてボンヤリとしたことを書こうと思う。

 私の出身地は山梨県である。賢明なアエラ読者でも山梨のことはあまり知らないと思う。私は「東京から1時間半で行ける秘境」と呼んでいる。

 山梨は中部地方なのだが、東京に住んでいると、天気予報区分で「関東甲信越」という括りにされることが多い。よって、本当の関東の人は山梨を「関東地方」とは言わない。一方、中部は「中部東海地方」という区分にも入れられるので、こちらでは静岡、愛知辺りが主役というイメージから「山梨? 関東でしょ?」と言われる。どっちにいても「あっちの人」と思われるのが山梨県という場所だ。

 一度など「四国でしょ?」と言われたこともある。「じゃ四国4県挙げてみろ」と言うと、その者は「香川、徳島、高知、山梨!」と元気に言い放った。私が?然としながら「愛媛は?」と言うと、「あ! そうだ! 愛媛もだ!」と。それでは四国じゃなくて五国だ。

 海なし県は全部で8県。栃木、群馬、埼玉、山梨、長野、岐阜、奈良、滋賀。どうだ、この地味さは。スクールカーストの下位グループ感が否めない。その中でも抜群の目立たなさが山梨ではないだろうか。上位じゃなかったら、最下位の方がまだ目立つ。バカだけど明るい奴はいじってもらえるだろう、それと同じだ。

 滋賀は琵琶湖ばかりを推して皆にいじられるチャーミングさがある。奈良は「元は都だったんや!」と言う度に「やかましわい!」と京都と大阪に両?を張ってもらえる。埼玉は出来る東京の弟みたいなポジションだし、群馬は「関東」というイケてるグループのダメな子役。栃木は田舎者のレッテルを逆手に訛(なま)りキャラで勝負する。長野はとにかくデカい。あと天皇陛下が遊びにいらっしゃる。岐阜だけは友達だと思ったが、新幹線が走っている。

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