経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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またか……というか、これが地方再生につながると本気で思っているとしたらもうアホとしか言いようがない記事を見つけました。
日経新聞によると、栃木県は動画アプリ「TikTok(ティックトック)」で県の魅力を伝える動画を県内の高校生や大学生らと制作。べろんちゅさん、脳みそ夫さんらTikTokを使いこなすタレントを招き、ワークショップを開催。12月22、23日の2日間で県内をバスで移動しながら撮影する。
費用はすべて税金で賄われます。同じ仕事をしている友人の言葉を借りると、
「ゆるキャラでクリック数を競い、B級グルメでサクラを動員して箸をたくさん入れてもらうのを競い、ブロガー呼んでPVを競い、ユーチューバー呼んで再生数を競い、インスタ映えだとかいっていいね数を競い、ほんとはやり物のレッドオーシャンに税金使うのがお好き。役所にしかできん仕事しろ……」
まさにその通り。税金を使うわけだから、今回のケースでは栃木県は使う金額や事業の目的、その根拠、成果を測る具体的なバロメーター(たとえば県内観光客の坪単価あたりの売り上げ増など実質的なキャッシュイン)を提示するべきです。黒字になる見通しを示した上で、赤字の時の責任はどうするのか。県民の税金負担ならそれを明記した上で、県民が納得するかどうかがポイントです。自分の懐が痛まない他人の金でお祭りをやってわーわー騒ぐのに反対する人はいないのです。その点、ゆるキャラもB級グルメも成果が検証された、という話は聞いたことがない。