

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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早いもので、もう12月。今年もあと1カ月です。この時期の風物詩といえば「おでん」ですね。おでんは、からあげクン、中華まんと並んでローソンの3大定番商品で、とても力を入れています。
定番商品は、「思い出の味」として親しみを持って頂いている方が多いように思います。例えば、からあげクンなら小中学生の時にお母さんがよく買ってくれたとか、中華まんなら部活帰りに友達と一緒に買って食べたとか。
おでんの場合、上京して初めて一人暮らしをした時に、「ローソンのおでんがあってホッとした」と感じてくださる方も多いようです。少し心細かったけれど、ダシの香りにちょっと安心したと。故郷の記憶が呼び起こされ、新天地でも買ってくださるようになるようです。
税込み70円均一セールの時は、一家3、4人分をまとめ買いされるお客さまも多く、1日千個売れる店舗もあるほど。こうして毎年、売れているからこそ、定番商品になるのです。
定番だからといって、味を変えていないわけではありません。逆におでんは毎年、味の微調整をして安心感と新鮮さを感じて頂けるようにしています。つゆは全国で9種類あり、それぞれの地域に合わせた味付けにしていますが、その年によってダシの利かせ方を変えてみたり、しょうゆの塩加減を変えたりしています。
また、具材では大根の切り込み方、白滝の太さを変えて、つゆがより染み込み、絡みやすいように改良しています。もちろん、新しい具材との入れ替えもしています。ただ難しいのは、変化の「さじ加減」。急激に味を変えすぎると、「これは私の好きなローソンのおでんじゃない」と常連さんが離れてしまう可能性もあるので、どこまで変えるのか、非常に神経を使っています。
おでんはコンビニチェーン同士で独自色を出し、しのぎを削っています。今年も「ローソンが一番」と言っていただける最高のおでんになっていると自負しています。
※AERA 2018年12月10日号