夫の昇一さんは言う。

「みなさんと顔を合わせ、妻の仕事への理解を深められるので、妻とより協力し合えます」

 アラン・プロダクツは2014年に創業し、2年前にゲーム開発やネット広告を手掛けるユナイテッドのグループ会社になった。平均年齢28歳で、35歳の新藤さんも20代の社員を見ていて、「もう、飲みに行くぞと一方的に誘うだけの時代じゃない」と昔ながらのコミュニケーションに違和感を持っていた。一方でコミュニケーションの場は大切だ。そこで今年5月に始めたのがアランバーだった。

 新藤さんが社員が喜ぶような軽食を用意。この日は不参加だったが、普段は日本酒好きの花房弘也代表取締役CEO(26)がおすすめの日本酒を振る舞う。1回4万~5万円程度の費用は役員らのポケットマネーと経費でまかない、社員の負担はない。

 軽食の内容は毎回さまざまで、10月の鶏だんご鍋のときは新藤さんが前夜、仕事を終えたあとにスーパーへ行って食材を調達して帰宅。鶏だんごの下準備に深夜までかかった。社員の子どもやお酒の飲めない人も参加するのでスイーツも欠かさない。移転前のオフィス近くのカレー店にわざわざ配達を頼んだこともある。経営企画室の米倉道昭さん(27)は、

「カレー屋が遠くなってしまい残念だったのでうれしくて。こんなに社員のことを考えてくれるんだと感動して、この会社でもっと頑張りたいと思いました」

 その隣で新藤さんは言う。

「この会社好きだなという思いは、社員の力を最大化します。それ以上に、一人ひとりの喜ぶ顔を想像しながら準備するのが楽しいんですよ」

(編集部・深澤友紀)

※AERA 2018年12月3日号より抜粋

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