「ホテルの部屋を黒い布で覆い、象や蛇、猿を連れてきてほしいと要望を出していた」
というマイケル。ペットのチンパンジー、バブルス君にはスイートルームがあてがわれ、伊丹さんにもよくなついた。
マドンナは街をジョギングする。足が速すぎて見失うので、追跡をあきらめ、戻る場所で待機するしかなかった。ホテルに帰るとプールで泳ぐ。街で飲食する姿を見たことはない。
ローリング・ストーンズのミック・ジャガーも走る。ゆっくりなのでついていくと、そのまま演奏会場に着いてしまい、あわてて警備服を取りに戻った。
ファンサービス旺盛なエアロスミスのスティーブン・タイラーは街歩きが大好き。東京・原宿などでミック・ジャガーと間違えられ「ミックじゃない!」と声を上げることも。スマートフォンが普及すると、目撃情報が拡散されてやじ馬ともみくちゃになり、警備に骨が折れた。
今は国内アーティストの警備をわずかに担当する伊丹さん。ショッピングに情熱を燃やし、自分の存在をいつも気にかけてくれたフレディは異色のアーティストとして心に残っている。(ライター・斉藤真紀子)
※AERA 2018年11月19日号