国谷:パリ協定離脱というトランプ政権の政策が与える影響はないということでしょうか。

ポープ:環境分野において影響はほとんどありません。そう言うと「気は確かか」と思われるので答えるのは簡単ではないし、米国民としてトランプ政権の判断を恥ずかしく思いますが、事実、影響はほとんどないのです。

――この点について、対談終了後に補足説明を求めると、ポープ氏はテキサス州を例に挙げて、こう話した。

 同州の知事は環境問題に関心がなかったが、今では全米で最も再生可能エネルギーを活用する州の一つとなった。安価で害のない電力への需要が高まり、供給がマッチした結果だ。脱炭素への取り組みは、こうした市場経済の原理も歯車にしてトランプ政権発足前に動き始めており、トランプ大統領にも、これを止めることができないという。こうした非国家主体の取り組みの成功例が同書では多く紹介されており、都市や企業、市民による取り組みが、気候変動を解決するカギだと主張する根拠になっている。

国谷:非国家主体が米国の脱炭素化を牽引(けんいん)していると言われた。世界では、どのような動きが出ていますか。

ポープ:脱炭素への動きは、決して速いとは言えません。ただ、クリーンエネルギーの低価格化が進み、化石燃料の価格が上がっていく現状を背景にして、より多くの国々が決断を強いられています。インドは電力の半分を風力や太陽光といった再生可能エネルギーにするという目標を掲げました。中国は2020年までに二酸化炭素排出量を40~45%削減するという目標を3年前倒しで達成したと発表しました。こうした国が増えれば、自然と勢いが生まれます。一方で、電気を自由に売り買いすることができなければ、だれも風力発電を増やせません。公正な市場を作ることは、まさに国の役割です。そうなれば、安価なクリーンエネルギーが化石燃料に負けるはずはないのです。

国谷:日本における再生可能エネルギーの比率は16年で水力も含めて14.5%。政府はこれを30年までに22~24%、このうち太陽光と風力は、合わせて約9%の計画を掲げています。

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