結核の予防活動への貢献で、国際団体から「名誉会員」の称号を受けた秋篠宮妃紀子さま。海外への初の単独訪問は実り多き学びの旅となり、未来への一歩を踏み出した。
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6日間の「学びの旅」は、人々を癒やし、力づけた旅でもあった──秋篠宮妃紀子さま(52)の初の単身でのオランダ訪問は、謙虚に、誰からも丁寧に学んでいこうという姿が、出会った各国の人々に大きなインパクトを与えた。
「あ、昨日会った女の人だ」
紀子さまを見つけて、金髪の女の子が声を上げた。紀子さまはかがんで目線をあわせ、
「また会ったわね。どこに泊まっているの」
10月25日。ハーグで開かれていた第49回肺の健康世界会議(24~27日)での一場面だ。主催は国際結核肺疾患予防連合(本部・パリ)。世界の結核予防関連団体が加盟する国際組織で、紀子さまは日本の結核予防会総裁として、開会前夜の夕食会から参加した。
この日、空いていた時間帯に紀子さまが目指したのは、結核患者への差別克服をテーマにしたシンポジウムだった。オープンスペースに、小さな半円形の階段状の座席が設置され、即席のミニコロッセオといった雰囲気だ。
紀子さまはその一番下段の隅に、さりげなく腰掛けた。黒っぽいパンツスーツの服装も態度も自然体だから、マスコミがいなければ誰も「プリンセス」とはわからない。
パネリストは皆、結核に感染し、克服した女性たちだ。インド、南アフリカ、と様々な国の人たちが次々につらかった体験を訴えた。
「もう一生結婚できないのではと苦しんだ」
インドの女性はそう言って声を詰まらせた。
「病気が治っても、隣には座りたくないというのが皆の本音ですから」
今は結婚して2児の母という彼女は、「病気だったことを隠しては差別は解決しないことを学んだ」と続けた。
紀子さまは時々メモを取りながら、最後まで真剣に耳を傾けた。その最中にも、観客は会場を出たり入ったり。紀子さまのすぐ脇に足を入れて、上の座席へとのぼっていく人もいる。予定がすべて終わり、主催者が「プリンセスへ感謝」と話すと、「えっ」と息をのむような声があがった。