「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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組織において有能な人材を育てることは、社長の最も大切な仕事です。
ローソンは2003年に幹部養成機関として「ローソン大学」を創設しましたが、今年から運営を抜本的に見直しました。
ローソン大学は、経営的視点を持って業務を遂行できるリーダーを育成するという目的で始まりました。現在も方針は変わっていませんが、次第に「教育」という名目ならすべてローソン大学でやればいいんだという間違った認識が広がってしまいました。
「スーパーバイザーの養成など現場の教育もローソン大学に」という状況になりかねなかったので、ここで学ぶべきことは何かをきちんと整理しました。
まず、商品や流通など「業務」に関わる教育は現場のラインで行います。一方、ローソン大学では、現場だけでは体得が難しい知識、教養を身に付けて、リーダーとして成長できる場を提供します。ローソンの社内はもちろん、社外に出ても通用する経営者マインドを持った人材を育成します。
具体的には、年齢に関係なく、毎年40人くらいを選抜して、ローソン大学の研修プログラムに参加してもらいます。社内のリーダー研修の他にも、有名大学の社会人講座で勉強してもらうなど、さまざまなプログラムを用意しています。
一時的に業務から離れても、外の世界を見て、学び、知見を広げることは、人格的な成長にもつながります。
ただ、頭だけで理解して「外の世界は素晴らしい」と言っても仕方がありません。社員にはこの経験を自分で咀嚼して、仕事に落とし込んでもらいたい。
リーダーは自分で「決断」し、仲間を巻き込んで「実行」することが求められるからです。ローソン大学で学んだことを糧に、現場で実行と検証を繰り返す。
それが成功しても、失敗しても、その経験の積み重ねこそが優秀なリーダーを育てていくのです。
※AERA 2018年11月12日号