


「モンスターストライク」はスマホゲーム市場の売上額トップを独走するeスポーツの代表格だ。そのアート展にユーザーが殺到。日本人プレイヤーがゲームで“食える”日が見えてきた。
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腹に響く爆音。スマホの画面で何度も見てきた光景が目の前の大スクリーンに現れる。
「3、2、1……」
ゲーム開始。冷静に専用アプリを操作し、1分もかからずボスキャラを倒したありすぅさん。スマホアプリ「モンスターストライク(以下モンスト)」で屈指の技術を持つ神プレイヤーだ。大丸東京店で10月8日まで開催されたモンストのアート展覧会に、福岡から来場した。
「モンストというゲームと直接関係ない催しでこんなに人が集まっちゃうんだ……って少し感動してます」(ありすぅさん)
モンストは、課金売上額1041億円で日本一(2017年第3四半期)、18年3月の世界累計利用者数は4500万人を誇る。今回のアート展の前売りチケットにユーザーが殺到し、初日の9月28日から30分ごとの入場制限を行い開催された。
「モンストが、こういう展覧会や映画(現在公開中の『ソラノカナタ』)に進出するのは、うれしい。モンストがもっと有名になれば、日本のeスポーツの認知度も上がる気がする」(同)
「eスポーツ」とは、スマホやパソコンなどの電子機器を通じたゲーム全般を指す。今年夏のアジア大会の公開競技にも採用され、海外のプロゲーマーには年間億単位を稼ぐ人もいる。
だが、日本におけるeスポーツの認知度は低い。総務省情報流通行政局の報告書によると、海外のeスポーツ市場規模は700億9千万円、視聴者数3億3500万人のところ、国内は同5億円未満、同158万人。将棋や囲碁の世界にはプロ棋士がいるが、ゲーマーに日本はまだ冷たいのが実情だ。
eスポーツ振興のため今年2月に発足したのが「日本eスポーツ連合」だ。セガ、コナミ、カプコン、スクウェア・エニックスなど27の企業・団体が名を連ね、プロライセンスの発行も始まった。モンストを運営するミクシィも正会員である。
「アート展や映画、コンサートなどのイベントは、モンストのファンを増やすために開催。それがeスポーツの普及に貢献すると信じています」
と話すのは、ミクシィ ライブエクスペリエンス事業本部・比奈本真さん。
現状、ゲームで稼ぐといえばYouTubeで攻略動画を流し、その収益を得る方法が主流。先のありすぅさんも、多い月には200万円以上を稼ぐというが、「動画で稼ごうと思っていないので……。それより、プロゲーマーが自分の実力で稼げるような国になってほしい」と話す。
この10月からモンストのプロ8チームが全国5カ所をまわって戦うプロツアーも開始。賞金総額は6千万円だ。賞金付きプロ大会は、「パズドラ」や「ぷよぷよ」などのゲームでも行われている。18年はeスポーツ元年となるのか。(ジャーナリスト・伊藤雅浩、編集部・中島晶子)
※AERA 2018年10月29日号