

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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店内でお弁当やサンドイッチなどを調理する「まちかど厨房」を併設する店舗を、現在の5千店から、今年度末までに6千店に拡大する予定です。店内で揚げたトンカツを使ったかつサンドやカツカレーなど、できたて感あふれる商品は好評で、高いニーズがありました。多店舗で店内調理をここまで実施しているのは、ローソンだけ。今まで以上に「ローソンだけの価値」を感じてもらえるきっかけにしたいと考えています。
店内調理の実験は北海道で2004年に開始。その後、東北の統括支社長(当時)がほぼ独自で展開していましたが、東日本大震災では「まちかど厨房」のある店舗で、店にある水と米で炊き出しすることができました。流通網がまひした災害時にも、ライフラインとして機能することがわかったのです。以降、毎年増やし、熊本地震や先の西日本集中豪雨の際にも活用されました。平時の手作りのぬくもりが、有事のライフラインにもなることが強みです。
もう一つ、店内厨房があることで、シニアの方が働きやすい環境になっていることも大きなメリットです。働く意欲があっても、接客やレジ操作に苦手意識をもっているシニアの方は少なくない。けれど、調理に専念できる「まちかど厨房」の店舗で募集すると、シニアや主婦の方々が「作るだけなら得意だから」と応募されることが多いのです。
この「マッチング」はとても重要です。店内調理に慣れてきた方が、同僚の楽しそうな接客の様子を見たり、自動釣り銭機能付きのレジは意外と簡単だと気付いたり、「私にもできるかもしれない」と今度は接客にも挑戦される。短時間だった勤務時間が少しずつ長くなるなどの相乗効果もあり、結果的に人手不足対策にもなっているとオーナーさんから聞いています。
将来的には、ロボットシェフによる有名店のメニューなど、ローソンにしかできない「まちかど厨房」をもっと充実させていきます。
※AERA 2018年10月15日号

