5年前に全身のがんであることを公表しながらも多くの映画、ドラマで活躍していた俳優の樹木希林(きき・きりん/本名は内田啓子)さんが9月15日、都内の自宅で亡くなっていたことわかった。享年75歳。夫はロックミュージシャンの内田裕也さん(78)で、長女は内田也哉子(42)さん、その夫は俳優の本木雅弘(52)さん。
樹木さんは8月13日に左大腿(だいたい)骨を骨折し入院したが、最期は家族に看取られながら自宅で息を引き取ったという。
個性派で知られ、最近ではカンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「万引き家族」や「モリのいる場所」に立て続けに出演し、樹木さんのリアルな演技に多くの人が圧倒された。いかに「人間」「日常」を描くのか。樹木さんが今年6月、縦横無尽に語った貴重なインタビューを再録する。
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「女優がそんなことをするのは、ヌードになるより恥ずかしいことですよ」って人に言われた。入れ歯をはずしたのよ。映画「万引き家族」で。髪の毛もだらぁと長くして、気味悪いおばあさんでしょう?
自分の顔に飽きたの。是枝(裕和)監督の作品に出るのも、これが最後だと思ったから提案したわけ。私ももう後期高齢者で、店じまいを考えないといけない時期ですから。
それに、人間が老いていく、壊れていく姿というのも見せたかった。高齢者と生活する人も少なくなって、いまはそういうのをみんな知らないでしょう? 映画のなかで、みかんにかぶりつく姿がすごいと言う人もいるけれど、実を歯ぐきでしごいたの。歯がないって、そういうことなのよ。
雷が落ちた話も本当よ。カンヌに向かう途中の飛行機でね。離陸して間もなくだった。ドッギャーンってすさまじい音がして、私の座席の上の(内壁の)天井が破れて、破片やらなにやら色々落ちてきた。黄色い酸素マスクが三つユラユラ揺れて、まるでくす玉が割れたみたいだった。
カンヌに着いて「飛行機でくす玉が割れちゃったから、カンヌでの賞はもうないと思うわ」って言ったら、「やめてくださいよぉ」ってみんなに嫌がられたわね。そうしたら、逆だった。あれは、パルムドール受賞の、前奏のファンファーレだったわけよね。