装丁を手がけたさくらさんの本を前に話す祖父江さん。エッセー3部作『あのころ』『まる子だった』『ももこの話』の表紙の絵の素材は、タマゴの殻、フェルト、砂絵、と変化。「同じことを頼んだら、もう飽きちゃった、ってなっちゃうの」(撮影/倉田貴志)
装丁を手がけたさくらさんの本を前に話す祖父江さん。エッセー3部作『あのころ』『まる子だった』『ももこの話』の表紙の絵の素材は、タマゴの殻、フェルト、砂絵、と変化。「同じことを頼んだら、もう飽きちゃった、ってなっちゃうの」(撮影/倉田貴志)
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 国民的人気作『ちびまる子ちゃん』を生んだ漫画家さくらももこさんが先月乳がんで亡くなった。享年53。多くの本を手がけたブックデザイナー祖父江慎さんが語る、さくらさんの素顔は。

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「さくらさんは、まる子ちゃんがそのままおとなになったような人でした。いつも何かを作ってましたよ。箱を絵で飾るのが好きで、ニスで仕上げて留め金もつけたりして、すごく丁寧に。たくさんできるとお友達にあげちゃうんです。でも、仕事は別。やらないといけないことは面倒になっちゃう。『ありものでなんとかしてよ』って何度いわれたことか。だからさくらさんとの仕事は、スリル満点でした」

 そう語るのは、ブックデザイナーの祖父江慎さん(59)。手がけたさくらさんの本は、漫画やエッセー、ムック、文庫もあわせて100冊近くにものぼる。

 たとえば、さくらさんのシュールなギャグセンスが詰まった漫画『神のちから』は、本の口絵を3種類作り、グー、チョキ、パー、どの神様の絵が入っているのかは買ってみないとわからない。大量生産が前提の商業出版では、なかなか許されないアイデアだ。

「この本をいち、にの、さん!で開けば、お友達とじゃんけんもできるんです(笑)。さくらさんはチャレンジャーなプランだと、すごくのってくれたんですよ。『神のちから』は、増刷のたびに表紙と見返し、ちょっとした内容まで変えてたんです。こまかく数えれば、1冊なのに64種類ものバージョンがあるんですよ。『ちびまる子ちゃん』の初刷はたしか100万部以上。『神のちから』はそれと比べたら全然少なかったんです。なので、少部数だからできるデザインで楽しんだんですよ。さくらさんはお仕事モードではなかなか絵を描く気になってくれなかったですね。楽しくなくちゃ」

 祖父江さんがさくらさんから聞いた、『ちびまる子ちゃん』のアニメのパイロット版ができたときの話も印象深い。

「最初はとてもメルヘンで可愛らしく、まるでハイジみたいに健康的で、『これじゃまる子じゃないよってやり直してもらったんだよ』って」

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