中高一貫校で、生徒に海外経験を積ませる取り組みが増えているという。見知らぬ土地での経験は、中高生たちに語学力以上のものを与えてくれるようだ。
転校初日。担任の先生がみんなの前で紹介をしてくれると期待していた。なのに、留学生担当のスタッフが付いてきてくれたのは、教室の約10メートル手前まで。教室の場所を指さして伝えると、去っていった。日本でも緊張するのに、ここはニュージーランド。東京成徳大学中学・高校(東京都北区)高1の小林理咲さん(16)は、こう振り返る。
「教室にポンと放り込まれた感じでした。新入生や留学生の対応をするバディと呼ばれるクラスメートがサポートしてくれましたが、自分から話しかけないと友達の輪は広がりません。人見知りの性格でしたが、今では初対面の人とも進んで関われるようになりました」
東京成徳では中学3年生の3学期に、全員がニュージーランドに留学する。最初の2週間は語学学校に通うが、残りは留学生として現地校に入る。各校最大3人で、1クラスには1人だけ。ホームステイ先から学校に通い、留学中は家族と直接連絡をとることも禁じられる徹底ぶりで、3カ月間、ほぼ日本語を話すことはない。高2の田中啓太さん(16)はこう話す。
「3カ月間海外で暮らすことで視野も広がり、海外の友人とは今でもSNSなどで連絡をとっています。留学前に英検準2級に挑戦しましたが、全く届きませんでした。留学後に再度挑戦すると楽々と受かり、2級にも合格しました」
ただ、英語力は「副産物」に過ぎず、狙いはほかにある。中村雅一副校長は話す。
「2003年から希望者を対象に始めましたが、参加者が半数を超え、17年に入学する生徒から全員参加にしました。『親離れした』『積極的になった』『たくましくなった』という保護者の後押しが決め手です。中3の3学期なら、部活動を中断する必要もない。高校受験がなく、中高一貫の6年間を自由に使える大きなメリットです」