東京都などの自治体が進める私立高校授業料の「実質無償化」政策。公立高校の志願者急減など、高校受験戦線に異変を生んでいる。
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今春の東京都立高校入試は異例の展開を見せた。定員割れを起こした都立高が大幅に増え、過去最多となる30校以上が3次募集まで行ったのだ。
2017年12月に都が行った進路希望調査で、都立高の全日制志願者数は、前年より約3千人少ない5万2497人に落ち込んでいた。一方で私立、国立、他県公立高志望者は1535人増え、1万7749人。多くの受験生が、私立へ流れたことがうかがえる。
大きな原因とみられるのが、私立高校授業料の実質無償化だ。都の助成金制度は、小池百合子知事が16年の知事選で公約に掲げた。額は家族構成や年収で異なるが、夫婦と子ども2人の世帯で年収が760万円未満の場合、国の就学支援金と合わせて44万9千円が支給される。これは東京都の私立高の平均授業料に相当する。
安田教育研究所代表の安田理さんはいう。
「特に公立高の総合学科や専門学科へ進学していた層が、大学進学を見据えて、推薦入試で私立高へ入学するケースが増えている」
神奈川や埼玉でも助成金制度を充実させており、東京都と同様に私立シフトが起こっている。安田さんはこうも指摘する。
「一般的に私立は生活指導がしっかりしており、グローバル教育や進路指導も、公立より充実しているといわれている。学費がかからないのならと、積極的に私立高を選択する受験生も増えるのでは」
この助成金制度で、注目されているのが、中高一貫ではない「高校単独」の私立校だ。高校からも生徒を募集する中高一貫校ではなく、周囲と一斉にゼロからスタートできる単独の高校を選択する受験生も多い。
創立110年を迎えた高木学園女子高校(横浜市)は来春、「英理女子学院」として生まれ変わる。従来の教育を受け継ぐ「キャリア部」と、新設の「iグローバル部」の2コース制。iグローバル部はグローバルコミュニケーション、高い教養、ICT&理数リテラシーを「三つのi」と名付け、これらを学ぶ新しい教育の場としてスタートを切る。