特に空軍の差は著しい。北朝鮮の第4世代戦闘機はMig29が18機程度、対地攻撃機Su25が約30機と見られる。韓国空軍はF15が60機、F16が160機など計500機が作戦可能だ。通常戦力では勝負にならないからこそ、北朝鮮は核とミサイル開発に向かったのだ。

 北朝鮮軍の総人員は128万人と言われ、韓国の62万人の倍だが、境界線沿いの地下陣地から出て南進すれば、圧倒的に優勢な韓国軍の航空戦力に叩かれ、補給を切断されて壊滅する公算が大だ。韓国にとって核以外の脅威は地下壕に隠れてソウルを狙うロケット砲と、韓国軍に似せた戦闘服を着て潜入する特殊部隊だが、位置が定かでない敵には米軍も十分な対処は難しい。

 韓国は弾道ミサイル「玄武2型(射程500キロ)などを1700発も持ち、航空戦力も十分だから、目標の位置さえ分かれば独力で撃破できるだろう。ソウル首都圏が相当の被害を受ける可能性はあるが、韓国全域が占領されることは考えにくい。

 北朝鮮の「完全な非核化」がもし達成できれば、韓国軍は自力で国を守れるだろうが、非核化の検証は困難だ。北の核弾頭数の推定は「約12発」から「60発以上」と大差があり、仮に12発を提出しても「他に隠しているはず」との疑いが生じ、紛議を招くのは必至だ。

「完全な検証」のためには、弾薬庫や地下のミサイル陣地など全ての軍の施設を、抜き打ちで徹底的な査察をする必要がある。北朝鮮がそれを認めるとは考え難い。核の脅威が消えない以上、米韓の同盟関係が解消することはありそうにない。(軍事評論家・田岡俊次)

AERA 2018年7月2日号