経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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“フランス通信”も3回連続となり、今回が最後です。フランスと言えば、何といっても地方に特徴があります。パリは国際都市ですが、TGVで40分も離れていないシャンパーニュなどは、完全な地方都市です。観光客はたくさん来ますが、そこに住んでいる方々の地元に対するプライドは半端なものではありません。
シャンパーニュですからシャンパーニュを飲むのは当然です(ちなみにシャンパーニュとスパークリングワインの違いはご存じでしょうか? シャンパーニュ地方で生産されたものしかシャンパーニュと呼ぶことができません。それ以外はスパークリングと呼びます。先日テレビでアメリカのスパークリングをシャンパーニュと呼んでいた芸能人がいたので、あえてご注意申し上げます)。人の数だけチーズがあると言われるフランスですが、シャンパーニュに合わせるのは当然地元のシャウルス。それ以外絶対にダメだ、というわけではありませんが、この組み合わせで飲んでいると、機嫌がよくなったレストランのオーナーがサービスしてくれるのは間違いありません。それだけ、自分たちの地元にプライドを持っている。
これはブルゴーニュに行っても(ここはピノ・ノワールとエポワース)、ボルドーに行っても(もちろんカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランのボルドーブレンドにシェーブル<バラット>)同様です。「おらが村」のものが一番なのです。
それ以外のものを飲んだり食べたりしてはいけない、というわけではありませんが、地元の方が地元のものにものすごいプライドを持っているのは事実で、そのこだわりは半端なもんじゃない。日本の地方で仕事をしていて違うな、と感じるのはこの点で、地元の方の偏見とすら呼びたくなるような強烈な地元愛。それで何がいけないんだ、という開き直り。このくらいやらないと地方経済のエコシステムなどはできないということを痛切に感じるわけです。
私が仕事をしている岩手県などでも、イオンモール、スターバックスやセブン-イレブンができると地元の人が喜ぶわけです。「あ~、うちも都会になったな~」というわけですが、フランスの地方都市でそんなことを言う人は一人もいません。地元の農産物はおろか、小売店に至るまで地元資本以外はいらないと信じており、そこには日本全国ミニ東京を目指して失敗してしまった日本経済の姿はまったくありません。そりゃ、地元の金がすべて外部資本にストローされてしまうわけですから、元来喜ぶ筋合いはありませんよね。
なぜ、うちにはコンビニは出店させないという決断をする市や町がなかったのか。経済(金回り)のシステムから見ると実に不思議な話です。
※AERA 2018年6月4日号