
若手経営者というとカリスマ型を想像しがちだが、近年はその限りではないようだ。フリマアプリ・メルカリの社長兼COOの小泉文明さんも、その型にはまらない一人だ。
「最近どう?」
「こないだの仕事、いい出来だったね」
利用者同士が商品を売買するフリマアプリ最大手メルカリ社長兼COOの小泉文明(37)はオフィスを歩き回り、社員に次々と声をかける。
広報担当の女性社員は「私たちも『小泉さん、これどう思います?』なんて気楽に聞いちゃいますね」と笑う。
2013年の創業から5年でアプリのダウンロード数が日米英3カ国で1億超、売買される商品の流通総額は月100億円超と急成長を続けるメルカリ。小泉は17年4月から、その経営を創業者の山田進太郎(40)から引き継いでいる。
山田は学生時代から「早稲田のビル・ゲイツ」の異名をとったほどの起業家だ。一方、カリスマから社長のバトンを受けた小泉が信条とするのは、社長と社員が同じ情報を共有しあう対等な関係づくりだ。
「ウチは個人の給与といったセンシティブな情報以外は、かなりオープンです。仕事をするうえで必要な情報は誰もがほぼ全て手に入れられるので、社員と僕が持っている情報量は大差がない。社員一人一人が、経営者マインドを持って意思決定することが可能なんです」
そう話す小泉は、情報のオープンさこそが、会社全体の意思決定のスピードと、質の高さにつながると考えている。社員に積極的に話しかけ、身近な印象を与えるのは、実は小泉の経営手法の一つだ。
「まずい情報を早く知りたいと思っているからこそ、社員に話しかけるんです」
険しい顔をしている上司に対して、部下はネガティブな情報を伝えづらい。一方、上司が身近な存在であれば、不安要素がまだ可能性にすぎない段階でも伝えておきやすくなり、結果的に問題に対して素早く対応できる。
「社内の仕組みなど、ベンチャー企業なので100点満点じゃないところはある。不満を聞いてあげて、謝るところはごめんって謝っちゃう。気づいてあげられなくてごめんとか、考えて制度を整えていくよとか、素直に社員に言えばいい。一昔前の社長のように強がっても、すぐにバレるから」