結果的に新たな融資はほぼ実行されず、12月には融資が完全に打ち切られた。これを受け、スマート社は今年1月、賃料が払えないとオーナーらに通告。4月には倒産した。この間に何があったかはまだ未解明だ。
「高収益を上げる営業部門の発言権が圧倒的に強く、営業がこうと決めたことに審査部門は逆らえず、『物言わぬ審査』と呼ばれた」
あるスルガ銀行員はそう評した。行内にはシェアハウスの行く末を危ぶむ声も出たが、営業部門は聞かなかったという。
AERA4月9日号でも詳報したように、多くの不動産業者がスルガ銀の融資条件に合わせ、通帳コピーなどを改竄して貯蓄や年収を水増ししていた。スルガ銀では通帳原本を確認するのが鉄則だったが、どういうわけか、改竄資料は横浜東口支店を中心に少なくとも7支店・出張所で見逃された。中古1棟マンションへの融資でも不正は蔓延しており、不正を見逃した支店は東北や関西にも及ぶ。
オーナーらの弁護団が5月7日に公開した音声データでは、スルガ銀の支店担当者だとされる人物が、資料改竄ができる業者を別の業者に紹介するような電話のやり取りが含まれていた。スルガ銀の社内調査で、複数の融資担当者から「書類改竄を黙認した」と認める回答が寄せられていたことも判明した。
スルガ銀は取材に対し、冒頭の支店長発言について「把握していない」とした。
多くのサラリーマンとその家族の人生を狂わせた「貸し手の責任」が問われている。(朝日新聞記者・藤田知也)
※AERA 2018年5月21日号