とはいえ、希子さん自身も自分の中の偏見に最近気がついた。

「男は強くて、守ってくれる人がいい、オシャレするような男は嫌だ、と思っていたんです。白いTシャツとデニムを穿いている人がタイプです、と言っていたこともありますが、それもどうでもいいなと思えてきました。男性にも、男性らしくしなくちゃいけないと思っている人は多いですよね。男たるもの酒くらい飲めないといけないとか、草食だったら男じゃないとか。それもプレッシャーだと思う。

 男性が男性らしく、女性が女性らしくということよりも、自分がどういう人でありたいか、どういうものを楽しみたいかということのほうが大事。男とか女とかいうことよりも、『自分らしさ』のほうがおもしろい。いかに個々を尊重し、認め、受け入れるか。個々の魅力をもっと見ていったほうがいいと最近思うようになりました。だから、男も女も総見直ししないと」

 きちんと自分の言葉で発信する強さ、しなやかな自由さが評価されて、今年、ディオール・ビューティのアジア初のアンバサダーに抜擢された。昨年は「OK」ブランドも立ち上げている。ポップな低価格帯の量販向け商品を発売するブランドとしてだけでなく、モデルや俳優ではない自分自身のメッセージを仲間と発信する場と考えている。高価なハイブランドだけがファッションじゃない、自由に楽しもうとKikoスピリットも伝えたかったという。

「発信していくことによって、同じ考えの仲間が増えてきました。こうやってグローバルな活動ができるのも、ブランドを立ち上げられたのも、私の考えに賛同してくれた仲間が集まって来てくれて、みんなの協力があったからこそ。発信することは、波風も起きるし、すごく怖くて嫌な思いもするけれど、それ以上にいい意見がもらえる。でも、女性が言うと『女がまた騒いでるぜ』みたいに思われるから、男の人も声を上げてくれたらいいですよね。個人攻撃じゃなくて、不自由な圧力がかかる世の中の仕組み自体を変えなければ、前に進めない。私たちが地道に、毅然とした態度で訴えていくしかないかなと思っています」

(ジャーナリスト・速水由紀子、編集部・大川恵実、写真部・東川哲也)

AERA 2018年5月14日号より抜粋

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