今世紀最大の人道危機とされるシリア内戦。イスラム国(IS)の占領と暴力、破壊を経た現地の状況を内側から伝えるドキュメンタリー映画「ラッカは静かに虐殺されている」が現在公開されている。ここで取り上げられている市民ジャーナリスト集団「ラッカは静かに虐殺されている(RBSS)」とはどのような組織なのか。
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「ラッカは静かに虐殺されている」は、アメリカ生まれのドキュメンタリー作家、マシュー・ハイネマン監督による作品。2014年、過激派組織「イスラム国」(IS)に占領されたシリア北部の街・ラッカの惨状を、スマホを武器にSNSに投稿し続ける市民ジャーナリスト集団「ラッカは静かに虐殺されている(RBSS)」の活動を追ったものだ。
ISに斬首された人々の首が広場の柵に無造作にさらされる様子など、海外メディアが報じられない真実は世界に衝撃を与えた。一方で彼らの勇気ある行動は、大変な危険に満ちている。脅威を感じたISは彼らの自宅を探し出し、脅迫を繰り返す。仲間が捕らえられ、次々と処刑され、危険は家族にも及んでいく。マシュー監督は話す。
「ISについて調べているときにRBSSの活動を記事で知った。彼らとISの闘いをもっと広く世界に知ってもらうために映画を作ったんだ」
メンバーの日常生活を描くことで、彼らの“人間としての顔”を国際社会に訴えることも大きな目的だったと言う。
「さらに重要なのはISが“イデオロギー=思想”であることだ。たとえISが去っても、その思想が残り、ほかの団体がほかの場所で似たような旗を揚げるかもしれない。僕はその危険性を映画で伝えたかった」
シリア国内で身に危険の迫ったRBSSの中心メンバーたちはドイツ・ベルリンへと逃れていく。しかし、そこで彼らが遭遇するのはネオナチによる「難民・移民ヘイト」のデモ。さらに同じ難民のなかにもISの思想を持つ敵が潜み、脅迫はやまない。Skypeインタビューに応じてくれた、RBSSメンバーの一人、ハッサンは話す。