
石田衣良の小説『娼年』が、松坂桃李主演で映画になった。ほぼ全編が濃密なセックスシーン。いま公開することで、「すべての不幸の源」を取り除きたいという。4月6日の公開を前に、石田と松坂が語り合った。
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──2016年の舞台版「娼年」は話題になりました。松坂さんは舞台版に続き、映画でも主人公の娼夫・リョウを演じました。映画にはどんな気持ちで臨まれたのでしょうか。
松坂桃李:映画化の話は、舞台が終わった後、わりとすぐにあったんです。一番大変だったのは、舞台で一度完全に燃え尽きたところから、再びモチベーションを立て直して、リョウを演じるために熱量を上げていかなければならなかったこと。僕も演出家の三浦大輔さんも、出せるすべてを出し切って、一度は灰になっていましたから。
プロの娼夫の体作り
石田衣良:あの舞台がすべての始まりだよね。劇場の前に当日券を求めるお客さんたちが長蛇の列をつくるのを見て、「みんなこういう作品を求めてくれていたんだ」とうれしかった。
松坂:客席にせり出した舞台に置かれたベッドの上で、セックスシーンを演じ続けました。舞台では三浦さんと僕は「共犯関係」。お互いに責任を半分ずつ背負う覚悟で臨んで、燃え尽きました。今回の映画も同じ。撮影に入る前に、映画でも監督・脚本を務めてくれた三浦さんと2人で飲みに行って、また責任五分五分の「共犯関係」で自分たちのすべきことをやろう、と確認し合った。今回も三浦さんのハードルは高かったですね。
──どんなハードルでしたか。
松坂:芝居の要求がとにかく高いんですよ。三浦さんの前ではウソがつけない。ウソの芝居はバレてしまいますから。自分ではうまくいったなと思っても、「カット! ちょっと今の芝居はやめて」とか言われちゃう。
石田:それは怖い! そんな編集者がいたら、僕は書けなくなっちゃうよ(笑)。この作品では、ベッドシーンを通してリョウの成長や変化を見せていかないといけないからね。相当難しかったんじゃない? 登場する女性の数だけベッドシーンにもバリエーションがあるし。動きは監督の振り付けだったの?