

見えない「冷戦」が激化投票前から結果が見えていた3月18日のロシア大統領選だが、見えないところで対決が起きていた。「第2次冷戦」とも言われる米ロのサイバー対立が激化している。
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「今までロシアの声に誰も耳を傾けなかった。今こそ我々の声を聞くべきだ」
3月1日にモスクワであったプーチン大統領の年次教書演説は、2週間半後に迫っていた大統領選での勝利演説を前倒ししたような内容だった。通算4期目となる「今後6年」を強調した基本方針で目を引いたのは、大型画面で次々と紹介された自国の新型核戦略兵器だ。
その約1カ月前にトランプ米政権が、核軍縮方針を放棄するような「核戦略見直し」(NPR)を発表したことを受け、プーチン大統領は「ロシアや同盟国への核兵器使用には直ちに報復する」と述べて、対米姿勢を鮮明にした。「再び強い国に」を口癖とする互いの大統領の「強いリーダー像」の演出を象徴するかのような米ロのつばぜり合い。しかし、両国の対立はむしろ、目に見える表層の世界よりも、サイバーという見えない空間で、すでに激化している。
ロシア大統領選が約3週間後に迫っていた2月27日の米上院軍事委員会の公聴会。サイバー軍司令官を兼務する米国家安全保障局(NSA)のロジャーズ局長(退職予定)は、ロシアの対米サイバー攻撃が「続くと考えている」として、今年11月の米中間選挙も標的にされる危険性があるとの見解を示した。
ハッキング技術を駆使して2016年の米大統領選に干渉したとされるロシアについて、「報復攻撃をしているのか」と問われた局長は、「(大統領から)正式な指示は受けていない」としながらも、「与えられた権限の中で対応している」。ただ、「これまでの対応が十分でないことは明確だ」とも答えた。
工作活動というと、スパイを使う中央情報局(CIA)が主体だと思いがちだが、海軍大将のロジャーズ氏がトップを兼務するNSAとサイバー軍が、サイバーセキュリティーを担う米国の二大機関だ。世界中をつなぐインターネットや急速な発展を遂げるITを最大活用することで、遠隔操作による大規模な工作活動がより容易になった。