寺島しのぶ(てらじま・しのぶ)/1972年生まれ。映画、舞台、ドラマなど多方面で活躍。主演作「オー・ルーシー!」は4月28日から東京・渋谷のユーロスペース他で公開(撮影/山本友来)
寺島しのぶ(てらじま・しのぶ)/1972年生まれ。映画、舞台、ドラマなど多方面で活躍。主演作「オー・ルーシー!」は4月28日から東京・渋谷のユーロスペース他で公開(撮影/山本友来)
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 フランス人アートディレクターと2007年に結婚した俳優・寺島しのぶさん。言葉の壁をどう乗り越えたのか。当時の心境や学習法とは?

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 4月公開の映画「オー・ルーシー!」で私が演じたヒロイン・節子の人生は、英会話をきっかけに大きく変わりました。地味で物が溢れた部屋で死んでいくつもりだったような彼女が、姪の頼みで仕方なく英会話教室に通ったら、たまたま素敵なジョン先生が居合わせた! 人とほとんどかかわったことのない節子が、挨拶のハグでギュッと抱き寄せられた瞬間、彼女のうちにあった何かが弾けます。ジョシュ・ハートネットがジョン役ですから、そりゃそうなるよね、と納得しました(笑)。

 私はもともと日本が大好き。海外への挑戦なんてこれっぽっちも考えていませんでした。そんな私が英語を話したいと本気で思ったのは節子ではありませんが、夫(ローラン・グナシアさん)に出会い、「この人しかいない!」と思ったことが大きいですね。

 夫はフランス人ですが英語が話せたから、私もたどたどしい英語でアプローチしたんです。電話だと沈黙しちゃうので、思いを伝えるのはもっぱらメールでした。調べて調べて、書いて書いて。それで英単語を増やしていきました。

 最初の頃は一緒にお茶しても、節子のようにニコニコ微笑んでいるだけ。それこそ会話がなく、「コーヒー、プリーズ」ぐらい(笑)。ろくにしゃべれないからすごく疲れるんです。でも、またすぐに会いたくなる。一緒にいると楽しいから英語を話したいと思うし、何より自分の気持ちを伝えたいという思いが強かった。気持ちって、何となくも伝わるけれど、言葉で伝えられたら素敵じゃないですか。それで英語の勉強を始めました。

 先生についたこともありましたが、一番身についたのは彼との言葉(会話)から。伝えないと伝わらないから必要に駆られて勉強しました。逆に、いつか使うかもしれないと思って英語を学んでいる人を私は尊敬しています。

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