少女マンガの名作を生み出した「別冊マーガレット」。人気作家ふたりによる、いずれも初という原画展が開催中だ。デビュー45周年と38周年、計83年の画業がここに! ライター・矢内裕子氏がレポートする。
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くらもちふさこといくえみ綾、熱狂的な人気をほこるマンガ家二人の原画展「くらもちふさこ×いくえみ綾 二人展“あたしの好きな人”へ」が東京・池袋のパルコミュージアムで開催中だ。ともに少女マンガ雑誌「別冊マーガレット」(以下、「別マ」)の黄金時代を築いた。第一線のマンガ家二人による二人展は非常に珍しい。
デビュー45周年のくらもちさんは、『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』といった代表作から、映画化された『天然コケッコー』、そして昨年、第21回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した『花に染む』まで、斬新な表現で少女マンガの可能性を切り開いてきた。
いくえみさんはデビュー38周年。『潔く柔く』(出演:長澤まさみ、岡田将生)が映画化、昨年は『あなたのことはそれほど』(同:波瑠、東出昌大)がテレビドラマ化されたほか、今年は『プリンシパル』(同:黒島結菜、小瀧望)の映画化と公開を控える。
『あなたのことはそれほど』はタイトルからして不穏だ。「二番目に好きな人」と結婚しつつも再会した初恋の相手とW不倫を続けるヒロイン──危うい心理に踏み込み、主人公といえども安易な感情移入を許さない。
いくえみさんが「親しいけれど、ずっと憧れの存在」と語るくらもちさんは、同業者にファンが多いことでも知られる。
自身もカルト的な人気をほこるマンガ家・江口寿史さんは、くらもちさんと「同学年」。江口さんのデビュー時、すでに気鋭の少女マンガ家として活躍していたくらもちさんのことを「あれからずっとずーっと/くらもちさんは 最先端のままだ。/どうなってるんだ」(「文藝別冊 くらもちふさこ」から)と書いた。