「ホテル・ルワンダ」の監督が再び「虐殺」を描いた理由とは (※写真はイメージ)
「ホテル・ルワンダ」の監督が再び「虐殺」を描いた理由とは (※写真はイメージ)
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「ホテル・ルワンダ」のテリー・ジョージ監督が「THE PROMISE/君への誓い」再び「虐殺」を描いた。ロヒンギャ問題をはじめ、繰り返される虐殺の悲劇。その題材に挑み続ける理由とは。

「THE PROMISE/君への誓い」の背景となるのは、1915年に起きたオスマン帝国(現在のトルコ)によるアルメニア人大虐殺だ。150万人が犠牲になったとされるが、トルコ政府はいまも虐殺を認めておらず、世界的にもあまり知られていない。テリー・ジョージ監督は「ホテル・ルワンダ」(2004年)のリサーチのなかで、この虐殺について知ったという。

「これは20世紀に最初に起こった大量虐殺です。組織的に行われ、その後のホロコーストにつながっていった。ヒトラーはユダヤ人一掃の命令に躊躇する将軍たちを前に『大丈夫。アルメニア人の虐殺のことなんて、誰も覚えていないじゃないか』と言ったそうです。実際、この大虐殺は歴史から忘れられている。だからこそ光を当てなければと思いました」

 映画はアルメニア人の青年ミカエル(オスカー・アイザック)と、快活な女性アナ(シャルロット・ルボン)、アメリカ人ジャーナリスト(クリスチャン・ベイル)の3人の関係を軸に描かれる。歴史の悲劇に男女の悲恋が絶妙に織り込まれ、心に響く。

「いまもロヒンギャ問題をはじめ、南スーダン、コンゴ民主共和国などで虐殺の悲劇は続いています。そうした状況を“一個人の物語”として語り、人々の目を向けさせないと、また次の大虐殺の種が生まれてしまう。僕はその思いに駆り立てられて、作品を作っているのです」

 北アイルランド・ベルファスト出身。70年代に「北アイルランド紛争」の渦中に身を置き、投獄された経験もある。

「僕を含め当時の若者はみな、英国軍からの迫害に対峙していたのです。さまざまな暴力も目にしました。その経験がこうしたテーマに向かわせていることは間違いありません。それに実はフィクションよりも、歴史を調べ、そのなかからキャラクターを探っていくほうが、僕には一から世界を作ることよりラクなんです。僕にSF作品は作れないでしょうね(笑)」

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