日本株も暴落…(AERA 2018年2月19日号より)
日本株も暴落…(AERA 2018年2月19日号より)

 米国発の株価暴落が日本にも襲いかかった。値動きが荒い一因に、AIの自動売買もあるという。証券業界も対策を練る。なんとそれは……。

 経済は調子がいいのに、下げ幅は史上最大だった。米ダウ工業株平均は2月5日、2008年のリーマン・ショック時を上回る前週末比1175.21ドル(4.60%)安という暴落に見舞われた。3日前に発表された好調な雇用統計が引き金とされる不思議な状況だ。伸び悩んでいた賃金の回復に弾みがつき、物価も上昇。これを受けて3月の利上げは必至、その後も米連邦準備制度理事会(FRB)が予想より速いペースで利上げを続ける──この警戒感から暴落したというのが一般的な分析だ。

●取引は「千分の1秒」で

「米国がくしゃみをすれば、日本は風邪をひく」との相場格言通り、米国株暴落の翌6日、日経平均株価は前日比1071円84銭(4.73%)安と、終値では16年6月のブレグジット(英国のEU離脱)・ショック以来の下げ幅となった。

 最近の日経平均の動きは恐ろしいほど速い。振り返れば16年、米大統領選で大方の予想を裏切ってトランプ氏が当選した11月9日に同919円安というトランプ・ショック、翌10日はトランプ氏の政策期待から同1092円高のトランプ・サプライズという乱高下も記憶に新しい。

 ダウや日経平均といった株価指数がジェットコースターのように上下するのは、「ミリ秒(0.001秒)単位で売買が執行される超高速取引や、アルゴリズム取引とも称される『超高頻度取引(HFT)』が影響しているのは確か。今回の日本株暴落も、海外のHFT型ヘッジファンドが朝から巨額の売り物を出していた」(市場関係者)。

●AIが歴史を学んだ?

 東京証券取引所の売買システム・アローヘッドは15年秋、約5年ぶりに刷新された。注文を受けて0.5ミリ秒未満で取引が成立する。投資家側は人間ではなく人工知能(AI)が自動的に注文を出す。「日本の株式市場で海外機関投資家とされる売買の8~9割はAIだといいます。ある米系証券会社では、顧客と取引所の間で注文を取り次ぐ証券ディーラーが数百人規模から数人になったというのは有名な話」(証券会社幹部)。今回のようなクラッシュ相場のたびにディーラーは淘汰、整理が進み、「電話で顧客と話す、テレビでおなじみだったディーラーの姿は皆無になっていくだろう」(同)。

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