地域金融機関も統合相次ぐ(AERA 2018年1月22日号より)
地域金融機関も統合相次ぐ(AERA 2018年1月22日号より)
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顧客向上サービスが赤字のところも!(AERA 2018年1月22日号より)
顧客向上サービスが赤字のところも!(AERA 2018年1月22日号より)

 超金利を背景に、「安定」の象徴ともいえた銀行が揺らいでいる。それは地域銀行も例外ではない。地銀に迫る危機と現状を経済ジャーナリスト・森岡英樹氏がレポートする。

【地域銀行はマイナスに転落?<図>はこちら】

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「A銀さんにご就職されたんだってね。いや~立派になられて」

 昨年末、地元に帰省して還暦祝いを兼ねた同窓会に出席した男性は、長男がA銀行に就職したというかつての級友にこう声をかけた。だが、級友から返ってきた言葉は意外なものだった。

「A銀も大変らしい。息子も苦労するんじゃないかと心配しているんだ」

 A銀行は、全国の地方銀行の中でも勝ち組の筆頭に挙げられる。その銀行でさえ「苦しい」というのは、どういうことか。

 これまで「地銀は各県のお殿様」というのが通り相場だった。地元自治体の指定金融機関を務め、安定した基盤に支えられた経営は盤石。地元の就職ランキングでは常に、県庁、電力会社とともに「御三家」の一角を占めてきた。しかし、いまやそれも昔話になろうとしている。

「地銀の採用面接が練習台にされているようだ」。地銀の人事担当者の間ではこんな会話が交わされている。今年4月入行組の採用は波乱含みだった。空前の売り手市場で大量の内定辞退者が出たのだ。「全体の2割もの辞退者が出たところもあったようだ。学生は社会の変化に敏感だ。地銀の将来を不安視している」(大手地銀幹部)

 超低金利が継続する中、地銀の体力は確実に低下している。「メガバンクが打ち出した人員の大幅な削減は他人事ではない。いずれリストラに踏み込まざるを得ない」(同幹部)というのが共通の認識だ。

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