「戦略顧問」来たれ!/広島県福山市が11月15日に開いた説明会では、枝広直幹市長自らが応募を呼びかけた(写真=ビズリーチ提供)
「戦略顧問」来たれ!/広島県福山市が11月15日に開いた説明会では、枝広直幹市長自らが応募を呼びかけた
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 政府が「副業・兼業の推進」を打ち出したことで、副業を解禁する企業が増えてきた。そうした動きは、自治体にも影響を与えている。

「週1日、副業、兼業限定。市の戦略顧問を募集します」

 広島県福山市が出したこの求人が、いま注目されている。募集を始めたのは11月15日。締め切りは12月12日だが、12月7日現在ですでに348人が応募しているという人気ぶりだ。

 同市企画財政局企画政策部長の中村啓悟さんも、

「いくらか反応があるかなぁ、くらいに思っていましたので正直びっくりしています。競争率が300倍を超えるので、この中にきっと我々が求めている人材がいるはず」

 と声を弾ませる。地方自治体が「副業、兼業限定」で民間から人材を公募するのは、日本で初めてのことだ。「経営感覚を持って、市の課題を俯瞰(ふかん)的に分析し、戦略立案ができるプロ人材」に同市が期待するのは、地方自治体に共通の悩みでもある人口減少対策だ。福山市の人口は47万人。いずれ減少に転じる見込みで、「対策の決め手を欠いている」(中村さん)のが現状。副業が注目されるいま、一歩先んじて優秀な戦略人材を確保するのが狙いだ。

 週1日、月4日の勤務が前提で、報酬は1日2万5千円。交通費と宿泊費は別途支給する。応募者の一人で、現在は東京の金融機関に勤める男性(35)は言う。

「東京のプロ人材は年収1千万円超だから、彼らの日給は単純計算で4万円以上。それに比べて日給2万5千円は割に合わない。私も含めて、手を挙げている人の目当ては報酬ではなく、本業でビジネスチャンスが生まれるなどのメリットを期待しているのでは」

 これまでも地方では官民を問わず、UターンやIターン人材を活性化に活用しようとしてきたが、転職や移住を伴うためハードルが高かった。

 地方の企業に大都市で働く経営人材を斡旋(あっせん)してきた日本人材機構社長の小城武彦さんは言う。

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