ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 ついに東レも登場。大手企業における様々なデータ改竄、捏造問題が頻発しています。神戸製鋼所の不正問題が発覚して以来、これは明らかに氷山の一角と、私はあちこちで申し上げておりました。1980年代なら発覚することがない問題だったはずです。長らくそこにいる社員にとっては「当然」と思われていたことが、ネットなどで世間に漏れるようになり、世間の基準からはかけ離れているということが露呈したに過ぎません。多かれ少なかれ、歴史ある大企業は世間離れした「常識」をいまだに続けています。今問題になっている日本相撲協会なども全く同じ構図です。こういう問題はアメリカにもあって、英語では「practice(悪習)」と言われます。

 本当は不正として処分されなければいけないのですが、公然の秘密として継続的に行われているpracticeが日本の大企業にもたくさんあるはずです。

 東芝の粉飾決算問題もこのpracticeです。もっと危ない経理操作をしている大企業はたくさんあるでしょう。大体、監査するべき立場の人たちは、その企業にいわば雇われているわけで、どう考えても身内なのです。その身内が厳しい審査をできると思いますか? そりゃ、お金をもらっているのですから、はなから無理なのは明らかで、我々企業買収の専門家は、最初から監査法人の出してきた数字は信じません。専門家が信じない数字を見せられて株を買っている個人投資家は、最もみじめな存在だと言えます。

 アメリカでもこういうことは起こるのですが、粉飾を意図的に見逃した会計士には厳罰が待っています。懲役50年なんて判例もあり、それで中立が守られる。これが現実。東芝のようなケースでは経営者は即刻逮捕ですね。あのスケールの会社の粉飾だと懲役100年とか出てもおかしくない。株主を裏切ったことになるわけですからその罪は重いのです。しかし日本では東芝の経営者はいまだにのうのうと暮らしていますよね。だったら、ちょっとインチキするか……というのが人情というもので、これが日本資本主義の最大の弱点なのです。ですからワタクシは基本的に日本株には投資をせず、すべてがクリアーになりうるアメリカ株に投資をすることをお勧めするわけなのです。

AERA 2017年12月11日号

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