さらにはパブ店内、ファストフード店内、病院の待合室、マンション入り口、個人宅の出入り口といった具合に、企業や個人など民間が管理するスペースとなるとさらに氾濫とも形容したくなる防犯カメラの普及ぶりだが、今のところ英国に住む人々の多くは、カメラがあったほうが安心なので仕方ない、と思っているようだ。知人に意見を聞くと、

「犯罪捜査などに役立っている実感があるので必要悪だろう」(50代英国人)

「密告や監視が横行したヴィシー政権の記憶があるフランスはこんなにカメラに寛容にならない」(在英30年のフランス人)

 警察はもとより監視カメラの活用に積極的だが、犯人特定につながりそうな静止画や動画をツイッターなどでも頻繁に配布している。近所で事件があり、捜査員がおたくの防犯カメラの映像を提供してもらえないか、と私の家に訪ねてきたことも一度や二度ではない。防犯カメラを設置すると、自宅の家財保険が割引になることもあるという。

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