経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
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トランプ米大統領が来日した。結局何をしに来たのだろう。
他にお友達がいない者同士の支え合い。そういうことだろう。だからこそ、接待ゴルフもあそこまでリラックスした感じになったわけだ。国難突破とか言っていなかったか?
とことん締まりのない首脳会談を見ていて、全く対照的に緊迫感みなぎる歴史的対決の場に思いが及んだ。戦後の国際通貨秩序を巡る米英攻防の場である。本欄でも取り上げた「バンコール」(9月25日号「ICOで行くバンコールの世界?」)が登場する。
バンコールは英国が提案した世界共通通貨だ。国々の合意に基づいて新たな決済通貨を創造しよう。それが英国案だった。考案者は、かのJ・M・ケインズ大先生だった。かたや、米国はユニタスなる新通貨を提案。ただ、ユニタスは実質的には米ドルでその価値を裏打ちされることになっていた。名前だけ変えたドルである。提案者は米国の財務官僚、H・D・ホワイトだ。