作家の室井佑月さんは、丁寧な説明を放棄した政治家に苦言を呈する。
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藤井青銅さんの『国会話法の正体』という本が面白い。政治家や官僚の国会での言葉は、「何も言っていないのに、何か言ったように思わせる」「何がなんでも非を認めない」というもので、それは「(あえて国民を)うんざりさせる」「(政治への)興味を失わせる」、という効果を狙ったものではないか、そうおっしゃっている。本には政治家がよく使う言葉と、藤井さんが考える政治家のホンネ翻訳が出てきて、笑ってしまった。
……笑えて良かった。現実が酷すぎて、もう笑えなくなっているから。国民への丁寧な説明を放棄した政治家は多い。今までもそうであったが、更に酷くなっているように感じる。取って付けたようなその場の言い訳さえ、しなくなった。まるで馬鹿は黙ってろ、説明したってどうせわからないんだから、そういわれているようである。
それでいいわけがない。私たちは税を納め、予算の配分を彼らに任せているが、国を、今の時代を、未来を、好き勝手にして良いという白紙委任状を渡しているわけではない。
藤井さんの本にも出てくるが、政治家がよく使う「仮定の話にはお答えできない」という言葉。藤井さんの翻訳では、「これは全否定【強い拒否】だ。(中略)議会や委員会、記者会見というのは、そもそも質問に答える場なのだ」。
「仮定の話に答えられないのであるなら、未来の話はできないのではないか(中略)そもそも政治の重要な一面は、仮定を使って未来に備える事ではないか?」
私もそう思う。
この国に打ち出の小槌(こづち)でもあったら、防衛費倍増だろうが、男女共同参画だろうが、良かれと思い考えついたことはすべてやったらいい。
しかし、そんなものはない。日本は確実に貧困化が進んでいる。OECDの貧困率データ2021ではワースト10に入ってしまった。そして、ここから盛り返せるかというとそれさえも絶望的だ。世界で類を見ないほど超少子高齢化が進んでいるから。