安倍首相は福島市佐原の農村部で選挙戦をスタート。復興政策を強調し、福島県産米のおにぎりを食べるパフォーマンスをしたが、原発事故には直接言及しなかった(撮影/写真部・東川哲也)
安倍首相は福島市佐原の農村部で選挙戦をスタート。復興政策を強調し、福島県産米のおにぎりを食べるパフォーマンスをしたが、原発事故には直接言及しなかった(撮影/写真部・東川哲也)
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「大義なき総選挙」と呼ばれる今回の衆議院選挙。このタイミングで総選挙に踏み切った狙い、そして最大の争点とは何か。ジャーナリスト・青木理氏が読み説く。

「国難突破」という奇妙な理屈を掲げて解散総選挙に打って出た安倍首相にとって、現下最大の目標はいったい何か。政治記者ではない私の記すことには以下、推測も交じるが、まずは何といっても政権の維持、そして憲法の改正であろう。少なくとも、首相のコアな支持層である右派団体・日本会議などは、現政権下での改憲を悲願として組織の求心力を保っている。

 では、首相はなぜこの時期を選んで解散に踏み切ったか。既に各所で指摘されている通り、野党の低迷を横目に眺め、いまなら負けないと睨(にら)んだから。解散後に起きたうねりのような野党再編で目算が狂ったかどうかはともかく、今ならば大負けはしないと算盤(そろばん)をはじいて解散を決意した。

 少し前まで「1強」を謳歌(おうか)していた政権だが、森友学園、加計(かけ)学園をめぐる疑惑、そして首相が寵愛(ちょうあい)する元防衛相の日報隠蔽(いんぺい)問題などで首相自身への批判は高まり、内閣支持率はつるべ落としに下落した。北朝鮮をめぐる緊張が高まり、国会も閉会したことで支持率は回復傾向に転じたものの、再び国会が始まれば野党が執拗(しつよう)に追及してくるのは間違いない。

 また、首相批判の高まりと支持率の急落は、改憲を目指す首相の求心力をかなり毀損(きそん)した。事実、9条に第3項を加えて自衛隊を明記すると突如表明した首相方針には自民党内から公然と異論が噴出、連立与党の公明党も慎重姿勢を崩さない。首相が唱える2020年改憲は困難との見方が支配的になっていた。

 このままでは改憲がずるずると遠ざかりかねない。しかも自身への追及が再び強まり、あれこれ厳しく非難されるくらいならすべてを“リセット”してしまえ。少なくとも大負けの可能性は低い選挙で“みそぎ”を受ければ、“民意”を背に政権の求心力と改憲への推進力を取り戻せる──そう睨んだのではなかったか。

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