その評価方法は後述するとして、まず実際のランキングを見ていくと、どの分野を見ても、上位にはやはり研究者の数そのものが多く、他大学と比較して研究予算が豊富な東大や京都大学など、いわゆる旧帝国大学がずらりと並ぶ。

 だが分野によっては、これまでにノーベル賞受賞者を出したことがない私立大学や地方国立大学なども上位に食い込んできている。

 神経科学分野では東大と京大に続く3位に慶應義塾大学が、地球惑星科学分野では、1位から4位までを旧帝大が占めるなか、5位に高知大学が食い込んでいる。そしてこの順位は、実は専門家や研究者が体感的に抱いている、分野ごとの大学の「評判」とおおむね一致しているのだという。

 データをまとめた小泉さんは言う。

「その分野に詳しい研究者らは論文を読んだり研究者同士で交流したりして、『この分野ではだいたいこの大学が強い』ということを体感的にわかっています。ところが、こうした実感は従来の世界大学ランキングでは評価されにくく、違和感があった。今回、私たちが提案する『厚み』を評価する指標で分析したところ、実感にも合った大学の研究力が見えてきました」

 一般に大学の研究力は、学術誌に掲載された論文数(量)や論文の質(引用された論文数)などで評価される。海外の学術出版社などが作成する世界大学ランキングは、この「量」と「質」を元に研究が評価されている。ただ、論文の「量」と「質」だけで評価すると、論文を量産するトップクラスの研究者が一人いるだけで、その分野における大学全体の評価が高くなってしまう。

 逆に、スターはいなくても中間層が厚く、多様な研究成果が生まれやすい素地のある大学は、評価されにくかった。

「日本の大学はこれまで、トップクラスの研究者ひとりを育てるよりも、大学の特徴に応じた研究分野の広がりを育ててきました。厚みを増した中間層の中から、ノーベル賞につながるような新しいトップクラスの成果が生まれるようになってきたのです」(小泉さん)

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