老後資金や子どもの教育資金――。お金の悩みは尽きない。マイナス金利の今、貯金だけじゃダメだと分かっているけど……。金融商品に下手に手を出して金融機関の言いなりになって損をすることも。こんな時代だからこそ、本当の投資を教えます。AERA 10月9日号では「資産運用」を大特集。内閣府大臣政務官の村井英樹氏に、お話を伺った。
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貯蓄から資産形成へ。金融庁は最近、そう掲げています。日本が人口減少に直面するなかで、みなさんに世界の経済成長の果実を享受していただきたい。
しかし現状では、個人金融資産1815兆円(2016年末時点)の過半が現金・預金。株式や投資信託は、保険や年金といった間接的な保有分を含めても18.6%にとどまります。米国は46.2%、英国は37.5%ですから、いかに少ないかが見て取れます。
この結果、各国の個人金融資産は1995年(英国は97年)と比べると、米3.32倍、英2.46倍に増えたのに対して、日本は1.54倍。主に金融資産の運用収益の大小によって生じた差です。そこで金融庁としては、金融資産をバランスよく組み替えてもらえるように政策で後押ししようと考えました。
●「回転売買」に問題意識
日米の投資姿勢の違いは「日本人は保守的だけど米国人はリスクを取る」といった文化論で語られがちですが、実は米国でも、かつては日本と似た資産配分でした。劇的に変わったのは、老後向けの資産形成を税制優遇で奨励するIRA(個人退職勘定)が74年に導入され、併せて投資家教育も拡充されてから。そこで得られた投資の成功体験が投資拡大につながりました。
これに対して、日本の個人投資家には投資の成功体験が足りません。金融事業者が目先の利益を優先したような商品や販売手法を重視したことで、顧客の真の利益が逸失したのかもしれません。ちょっとした値動きで取引を頻繁に繰り返す「回転売買」を顧客に勧め、そのたびに販売手数料を得る。こうした状況に金融庁は問題意識を持っています。例えば投資信託で非常に売れている「テーマ型」と「毎月分配型」では家計の安定的な資産形成には必ずしも役立っていないかもしれません。テーマ型は、投資先を「資源国」「BRICs」といった世間で話題の領域に絞り込むもの。営業トークはしやすいですが、その時々でテーマが変わるため、ブームが過ぎると基準価額が下がるおそれがあり、長期投資には向きません。毎月分配型は、利益を保有者に月々配当します。利益を再投資して稼いでいく複利効果が得にくくなります。