9月20日に来年9月16日に引退することを決意した、と発表した安室奈美恵さん(40)。約10年前の2008年、AERA5月12日号の表紙に登場し、「30代はナチュラルに素直にいられたらな」と話していた。その希望は、かなったのだろうか――。当時の記事を再掲する。
* * *
最初っから、裏切られた。
スレンダーで体のすべてのパーツが小作りの彼女は、きっと少食だろう。そう思って、撮影時、オーガニックブレッドのサンドイッチを用意した。それを見て、マネジャーが申し訳なさそうに一言。
「すみません……。がっつり肉系のお弁当がいいんですけど……」
もしかしたら、私たちは彼女のことを誤解していたのかもしれない。
1995年頃。女子は皆アムロになりたかった。ルーズソックスにミニスカート、厚底靴……、彼女のスタイルすべてがお手本。でも、彼女が吐露した当時の気持ちは苦悩だった。
「最初は他人事。周りだけが変わって。どうすれば喜ばれるかばっかり考えて、1番でい続けるってすごく辛かった」
幼い頃から人見知り。初対面で誰とも打ちとけられない自分を変えたのが、歌とダンスだった。スカウトされて入った沖縄アクターズスクールで、
「レッスンは鏡張りで、見るのは自分だけ。人の目を気にしないから良かった」
だが、1番になったら「人の目」しか気にしなくなっていた。求められるまま、3カ月ごとにCDをリリース。アルバム製作は平均1カ月、最短で2週間。何かを変えなければと思った。
プロデューサー小室哲哉氏を離れ、流行もビジネスも無視し、好きな音楽だけを追求しようと、「安室奈美恵」名を出さないユニット「SUITE CHIC」で活動を始めた。少し自信が持てたのは、反応が予想以上だったからだ。
ここがスタートラインとなり、「新生アムロ」は違う一面を見せ始めた。カラオケでは歌いづらい楽曲、ミュージカル仕立てのライブ。「好きなこと」が爆発した。そしてアムロは30歳になった。