ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
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私、自分でもすごく思うんですが、よく人から「本当にポジティブな性格だね」と言われます。意地を張ったり、虚勢ではなく、後ろ向きな考えはあまり頭に浮かんでこないなと、日々感じながら生きています。
ソチ五輪での悔しさから来年開催される平昌五輪を目指す話をしましたが、この期間で私にとって大きな出来事が、ケガでした。昨年3月、ドイツであったW杯のレースで転倒し、左膝の前十字靱帯を断裂しました。このケガがどれだけ重傷かは、他の選手の経験からわかっていました。でもケガをした瞬間、不思議と焦らなかったんです。
この話をすると、いつもみんなに驚かれたり、笑われたりするんですが、私ケガをして思ったんです。「治療やリハビリ中は24時間、ほぼ自分のためだけに時間を使える! 楽しみ!」と(笑)。実は夏のシーズンに入ってから、アメリカに留学する予定でした。向こうで語学を学びながら、地上でのジムトレーニングなども行って。だから偶然にもその期間の予定を何も入れていなかったので、留学は断念しましたが復帰に向けて時間を使うことができました。
焦らなかったと言いましたが、「もし平昌五輪に影響が出たらどうしよう」みたいなことも、全然考えませんでした。考えても仕方がないこと。半年後には自分の膝がどういう状態になっているか、結果はわかる。完治するのか、蓋を開けてみましょ!という気持ちでした。もしダメだったら、「自分の競技人生もそんなものだったんだな」と思っただけだったでしょうね。
そんなマイナスな考えより、むしろ強く思ったことがあります。それは、「ケガをした選手がどう復活していくか、そのストーリーをいろんな人に見てほしい」ということ。競技人生には当然、山も谷もある。だから親しいカメラマンさんに「ケガしたから、余計に良い画が撮れるかもしれないですね!」と話したぐらいで(笑)。何より選手以上に、人としてこうした苦労や経験は必ず蓄えになる。だから今でも、ケガがさらに私を前に押し出してくれたと思っています。それが私の本心です。
(構成/西川結城)
※AERA 2017年9月18日号