

【左】『もいもい』(市原淳・作)赤ちゃんの視線をくぎづけにしたイラストを用いてつくられた絵本。目玉のような赤と青のキャラクターが不思議な語感の言葉の掛け合いを繰り広げます(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン/1400円+税)
一人では何もできない受動的な存在から、「発達しようとする力」を備えた能動的な存在へ。「赤ちゃん像」は最近の研究で大きく変化しています。私たち親も、赤ちゃんとの「かかわり方」を変えなければなりません。子育て実用誌『AERA with Baby スペシャル保存版 早期教育、いつから始めますか?』では、脳の発達を変える赤ちゃんとのかかわり方を特集しています。
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東京大学大学院で、赤ちゃんの発達を通して人間の認知について研究している開一夫教授。10年前、書店で「赤ちゃんが選んだ本」という帯のついた絵本を見つけたことがきっかけで、監修の絵本『もいもい』『うるしー』『モイモイとキーリー』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版しました。
「並んでいた絵本を見て、うそだと思ったんです。本当に赤ちゃんの立場を尊重した絵本をつくってみたいと思いました」
その後、出版社に企画を持ち込みましたが断られ、ようやく一緒に絵本づくりに取り組んでくれる出版社が見つかったのは2年前。「あかちゃん学絵本プロジェクト」が始まりました。
さまざまな実験の中で、フィンランド語で「こんにちは」という意味の「モイモイ」という言葉のイメージに合う絵を4人の絵本作家に依頼。生後8~13カ月の赤ちゃんに集まってもらい、どの絵が視線をくぎづけにするか「選択注視法」を用いて実験したところ、市原淳さんの絵がほかの絵の倍以上の注目を集めました。
4人の絵本作家には、「うるしー」という語感をもとにしたキャラクターも描いてもらいました。それを赤ちゃんに見せたときは、ロロンさんの絵が選ばれました。実はこの絵は、お母さんたちの投票では最も人気がなかったものでした。
「これまであった赤ちゃんのための絵本は、親が思う『赤ちゃんが好きそうな絵本』。大人が思う『好き』は赤ちゃんは『嫌い』という場合もある。本当に赤ちゃんが選んだ絵を調べて絵本にすることができました」(開教授)
※『AERA with Baby スペシャル保存版 早期教育、いつから始めますか?』より