
独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。
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およそ2年前、この連載のオファーを頂いた時に、驚きとともに、一番に恐縮する気持ちが湧きました。
それまでの執筆陣は、サッカーの長谷部誠選手や、野球の上原浩治選手など。すでに世界で「何かを成し遂げた」人たちであり、だからこそ、その言葉が読者の皆さんにも響いていたはずです。まだ何も成し遂げていない自分にとって、この機会は恐れ多いものでもありました。
けれども、編集部の方から「若い人ならではの視点や考え方、変化や成長が必ずあるはず。それを届けたい」と話され、ありがたくも引き受けさせて頂くことになりました。
そこからは日々の思い、サッカーのこと、ささやかな出来事やカッコ悪いこと(マリオカートで負けたり!)、気持ちの揺らぎも含め、「今の自分」を背伸びすることなく伝えようとしてきました。
ただ、この間にどのような変化があったかと問われると、自分自身ではよくわかりません。けがをしていた時期もあり、思うような成長を遂げられなかった、というもどかしさが先に立っています。
それでも、日本から離れたこの地で戦うことが僕の「日常」となり、ストライカーとして、より一層「ゴールにこだわる」という気持ちは強くなっています。ドイツでは結果がすべてです。たとえミスや低迷が続いたとしても、ここぞという時に結果を残せば、ため息が一気に称賛の声に変わる世界だと思い知らされています。そのために準備を怠らず、どのような時も失敗を恐れずにチャレンジしようと。向上心を持ち続けて自分らしさを失わずに戦い抜こうと、そう決意を固めた2年間でした。
この号が発売される時には、ブンデスリーガの新シーズンがスタートしています。もしサッカーに興味をもってくださる方がいらっしゃれば、その人たちが笑顔になり、元気になれるような活躍を見せ続けたいと思うのです。さらに「もっと応援したい」と言われる選手になるためにも、常に武藤嘉紀らしく──また新たな挑戦を始めます。
※AERA 2017年8月28日号
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