ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 今日、朝のNHK-BS番組を見ていたら、フィンテックの特集をやっていて、韓国の無人コンビニなどを取材し、フィンテックはこれから日本でも本格化すると報道していました。正直、メディアがこのレベルだと日本のフィンテックは終わるな……と、がっくり来ました。

 フィンテック(Fintech)は、FinanceとTechnologyを組み合わせた造語。日本ではいまだに「現金以外の決済システム=フィンテック」と理解されている専門家が極めて多いのですが、もう大ばか者と言うしかありません。端的に言うと、三菱東京UFJ銀行、日本生命、野村証券、ついでに東京海上あたりまで日本の大手金融機関が怒濤のように明日から突然消滅する……と言ったらいかがですか? 日本経済が根底から覆されますね。

 これらの会社は大学の就職ランキングでも上位ですから若者の就職先もなくなります。実際私はアメリカでも会社を経営していますが、いわゆる従来型の金融機関との取引はほぼなくなってしまいました。フィンテック会社が、私や社員の給与の振り込みから社会保険の支払い、クレジットカードの引き落としまで、私の周りにあるあらゆる金融情報を網羅・管理してくれています。飛躍的に能力が上がったAI(人工知能)を駆使し、例えば、「60歳以降に必要なお金はこのくらいで、そのためにはこういう運用をしなさい」とか、「こういう事業をやっているのだから、今このくらいのお金を借りたほうがいい」というような、投資銀行業務そのものが完全にITで行われるのです。

 先日は5万ドル(約570万円)ほど借り入れをしましたが、フィンテック会社の人には誰にも会ったことがない。すべてネット上のやり取りだけで、申し込んだ翌日に資金が振り込まれました。口座自体は従来型の銀行にあるのですが、人が一切介在しないわけでして、こうなると民間金融機関はいりませんね。

 最終的には、日銀あたりのシステムに個人口座をマイナンバーとひも付けておけばあとは必要ないというレベルの話がアメリカでは現在進行形で起きているのに、いまだにフィンテックは電子決済システムだ、なんて理解していては話にならない。もうこれは金融界の産業革命と言うべき。金融機関のみなさん、焦ったほうがいいですよ!

AERA 2017年7月17日号