哲雄さんの闘病生活に寄り添う中で、余命宣告を受けた人やその家族に対して、当事者がほしい情報の提供と心のサポートが行き届いていないと痛感した。いつかは迎える「その時」に関する情報を提供する「ライフ・ターミナル・ネットワーク」を14年に立ち上げた。
「人生において死は、大きな流れのなかのひとつの通過点にすぎないと思うのです。夫が到達した死生観は“死ぬことと、生きることは同じ”ということ。死が近づいたときでも、人生の何もかもが終わってしまうのではなく、流れは続いています。フリーアナウンサーの小林麻央さん(享年34)が亡くなった後、たくさんの方が喪失感を抱いていると思いますが、麻央さんが伝えてくれたことは消えません。時間をかけて何度でも、それを受け取り続けることも彼女から託された“引き継ぎ”ではないでしょうか」
(ライター・村田くみ)
※AERA 2017年7月10日号