金子稚子(かねこ・わかこ)/一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。著書に『死後のプロデュース』(PHP新書)など
金子稚子(かねこ・わかこ)/一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。著書に『死後のプロデュース』(PHP新書)など
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 親の看取りは誰しもが経験するもの。しかし、ゆっくりと最期のお別れをすることができなかったと、後悔する人は多い。まだまだ元気だからと、話し合わずにいると、その日は急にやってくる。お墓のこと、相続のこと、延命措置のこと、そろそろ話し合ってみませんか? AERA 2017年7月10日号では「後悔しない親との別れ」を大特集。2012年に亡くなった、流通ジャーナリストの金子哲雄さんの妻・稚子さんに話を聞いた。

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 自分の身に万が一のことがあっても、残された家族が慌てないために「エンディングノート」を活用する人が増えている。しかし、自分で意思決定できない状態になったとき、延命治療や胃ろう、気管切開など終末期の医療行為について、答えを見つけることは難しい。

「『どちらを選ぶのか』ではなく『残された時間をどうして過ごしたいのか』といった、生きるための気持ちを大切にしながら、不安や違和感を覚えること、生活を送るなかで大切にしたいことを短い言葉で表すと、答えを導き出しやすい」

 そうアドバイスするのは、「ライフ・ターミナル・ネットワーク」(東京都中央区)代表の金子稚子さん(49)。金子さんは12年10月に、夫で流通ジャーナリストの哲雄さん(享年41)を、肺がんに似た肺カルチノイドで亡くした。

 哲雄さんは闘病を伏せて亡くなる前日まで電話取材を受け、病床で葬儀の打ち合わせや、会葬礼状を自ら作るなど、死後の準備に積極的に取り組んだ。その様子は死後、マスコミでも報道された。時間をかけて金子さんに“引き継ぎ”をして逝った。哲雄さんは葬儀だけでなく『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館)の刊行まで準備していた。

「葬儀や本の刊行など、夫が考え準備していたことを実行に移す日々を送りながら、『これは私のために用意してくれたのだ』と思うようになりました。本の制作があったから、悲しみに暮れるだけの時間が少なくて済みました」

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