アエラの連載企画「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はチームラボの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■チームラボ カタリストチーム カタリスト 金澤真(31)
オフィスのドアを開けると、うっそうと茂る植物が目に飛び込んできた。壁一面にある透明のディスプレーには滝が流れる。受付から会議室へ案内するのは、動物たちだ。Aの部屋ならAnteater(アリクイ)が、BならBear(クマ)、FならFlamingo(フラミンゴ)と、担当の動物たちが廊下のスクリーンに映し出され、目的の会議室までアテンドしてくれる。滝や動物たちの映像はセンシングの技術で、前に立つと水がその部分だけ避けて流れたり、動物たちから花が舞ったりする。
ここは東京・六本木にあるDMM.comの新オフィス。クレイジーで遊び心満載、でもかっこいい。デザインしたのはチームラボ。金澤真は、理想とするアウトプットを実現させるため、各分野のプロフェッショナルをつなぐ調整役、つまりカタリスト(触媒)として働く。このオフィスでは、全長約80メートルの空間設計、透明ディスプレーとプロジェクターの機材構成などに携わった。
「まずやってみたいアイデアを出し合うのですが、ハードルが高くても無理だと考えるのではなく、どうしたらその理想を現実に落とし込めるかを考えていきます。だからゴールが変わることもある」
2009年、慶應義塾大学総合政策学部を卒業し、チームラボに入社。エンジニア、プロジェクトマネジャーを経て、約4年前にカタリストに。15年のミラノ万博日本館での作品や、お台場で開催した「DMM.プラネッツ Art by teamLab」の展示なども担当した。
金澤は数十人いるカタリストのリーダー的な立場の一人ではあるが、会社は役職を設けておらず、上下関係はない。
「組織にありがちな政治的な人間関係の調整をする必要がないので、仕事の本質的でない部分に労力を費やすストレスがありません。自分のやるべきことに集中できます」
自由に発想をふくらませ、風通しのいい人間関係の中でそれを実現させていく。金澤たちは、きっと想像を超えるニッポンを作り出すはずだ。
(文中敬称略)
(編集部・大川恵実 写真部・東川哲也)
※AERA 2017年3月27号