2011年から県の公式キャラクターに“昇格“し、「愛らしい外見と、切れのあるダンス」(担当者)を萌えポイントに、安定した人気を保っている
2011年から県の公式キャラクターに“昇格“し、「愛らしい外見と、切れのあるダンス」(担当者)を萌えポイントに、安定した人気を保っている
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 地に落ちたイメージを回復させて、業績も上向かせる……。これまで、多くの企業が直面し、その実現に腐心してきた。これは、個人の場合でも同じこと。落ち込んだ底が深ければ深いほど、復活には時間がかかる。AERA 2017年7月3日号では、「どん底からの脱出」と銘打ち、見事V字回復した企業を大特集。そのとき企業は、個人は、何を考え、どう振る舞うべきなのか。当事者たちの話を聞いた。

 アイデンティティーに彷徨い、襲い掛かる病に倒れ、激しいバッシングにさらされる。辛酸をなめながら、それでも歩み続けた人を支えたものは何なのか。今回は、奈良県のマスコットキャラクターとして大活躍のせんとくんを紹介。あの一連の騒動から復活を遂げた理由に迫る。

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 奈良県マスコットキャラクターとして大活躍のせんとくん。奈良県庁が発表するせんとくんのスケジュールを見ると、6月だけで10イベントに出演予定で、土日はほぼ埋まる勢いだ。

 関連グッズは数多い。ツイッターでは奈良県庁が管理する公式アカウントのほか、非公式アカウントもあり、人気のものではフォロワー数は7万を超える。

 奈良県葛城市のマスコットキャラクター、蓮花ちゃんからは「好きな男の子 せんとくん」とラブコールが寄せられる。
 だが、発表当時の騒動を覚えている人も少なくないだろう。2008年2月12日、2年後に控えた「平城遷都1300年祭」PRの公式マスコットキャラクターとしてその姿が公になった時の反応は、散々なものだった。

「『ほかのイベントのキャラクターと大きく異なる』『自分の好みや価値観に合わない』『不快感を感じる』という批判が、当時せんとくん発表を担当していた平城遷都1300年記念事業協会(以下、協会)に寄せられました」(奈良県観光プロモーション課担当者)

 仏教界からは「風貌が仏様を侮辱している」といった声が上がり、市民団体では白紙撤回を求める署名運動が行われるなど騒動はエスカレート。せんとくんの生みの親である、日本を代表する彫刻家で東京芸大大学院教授の籔内佐斗司さんのもとにも非難の声が寄せられたという。

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