委員会採決省略の強行採決、実在した「怪文書」……。「安倍一強」のもと、自民党はなぜここまで傲慢になってしまったのか。その源流を「政・官の関係」「派閥弱体化」「小選挙区制」の現場で考察し、いかにして現在の一強体制が作られていったかを明らかにする。AERA 2017年6月26日号では自民党を大特集。
自民党の3大派閥といえば、経世会、宏池会、清和会。あくなき権力闘争を繰り広げたかつてのパワーは薄れ、今や派閥の領袖も所属議員も「顔」がよく見えない。「安倍一強体制」の下、ポスト安倍を狙う人材は育つのか。
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東京・永田町の全国町村会館の一室。金色のバッジを付けたスーツ姿の国会議員が続々集まり、あちこちで歓談の花が咲く。
自民党の派閥例会は、国会開会中の毎週木曜日の正午から開かれている。5月25日、宏池会の例会をのぞかせてもらった。
壁には、「所得倍増計画」を打ち出した首相、池田勇人氏に始まる歴代の派閥領袖が額に収まる。往年の大先輩たちに見守られるように、会長の岸田文雄外相(59)がマイクを握った。
「派閥が対抗して応援するわけでありますから、この選挙戦の成果が宏池会の戦闘能力を示すことになります」
力説したのは都議選への取り組みだ。テレビで観る外相とは別の一面に触れた気がした。
今年、60周年を迎えた最古参派閥の宏池会。その原点を名誉会長の古賀誠氏(76)に問うと、こんな答えが返ってきた。
「吉田茂政権が倒れた後、池田勇人さんが『吉田さんの無念を晴らす』というリベンジの思いで出発しました。原点はやっぱり権力闘争なんですよ」
●政治改革で激変が
しかし、自民党の「派閥」は今、明らかに変容している。
「派閥が弱体化したのは制度的な背景が大きい」と指摘するのは、『自民党─「一強」の実像』(中公新書)の著者、一橋大学の中北浩爾教授だ。
ターニングポイントは1994年の細川護熙政権時。小選挙区比例代表並立制への移行や、改正政治資金規正法など一連の政治改革法の成立が、派閥の存立を根底から揺さぶった。