今も、そういった決まりきったイメージから抜け出せているLGBTのキャラクターはマツコ・デラックスさんらごく少数だ。彼女のほかミッツさんやカルーセルさんを番組コメンテーターとして起用しているTOKYO MXの大川貴史プロデューサー(45)は、「意識してやっているわけではなく、頭の回転も本当に速いから番組をお願いしている」と語る。

●塗りつぶされる個性

 いまだに大手テレビ局がマツコさん以外のLGBTに対し「面白いおネエ」イメージを超えない演出に頼っているのは、なぜなのか。大川さんは推測と前置きしたうえでこう語った。

「キー局さんはどんな地方のおじいさん、おばあさんにもわかりやすく伝えることを重視しているからではないでしょうか。わかりやすくなければ見られませんから」

 メディアの中でLGBTに対する表面的な「理解」は進んだように見えるが、その奥でそれぞれの個性や思いは塗りつぶされている。そんなメディアをつくったのは、わかりやすさを求めすぎ他人への想像力を失いつつある受け手側なのかもしれない。(編集部・福井洋平)

AERA 2017年6月12日号

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