軍事的な圧力として、世界中が朝鮮戦争の再開を恐れる事態は極めて重大で、これはイースターエッグとは比べものにならない次元の「混乱」だ。米国の信用問題にも関わる。
●反トランプも勢いなし
トランプ政権の情報発信は極めて限定的だ。シリアに対するミサイル攻撃、アフガニスタンの「イスラム国」(IS)に対する大規模爆風爆弾による攻撃と軍事行動が相次いだが、トランプ氏は短いテレビ演説をしたのみで、攻撃の理由にはほとんど触れなかった。
これまでの大統領は、練りに練った演説をテレビで生放送し、軍事行動への理解を求めた。「ゴッド・ブレス・アメリカ」で終わるテレビ演説は見る人に、米国がなぜ戦争をしなければならないのかを知らせ、事態の深刻さを伝えた。国防長官と国務長官も記者会見し、攻撃の背景と、その結果を裏付けるためのファクトシートを提供した。
トランプ氏のホワイトハウスでは、この伝統が無視されている。ホワイトハウス内でいかに周到に議論されたとしても、国民にとってはあまりにも唐突。攻撃によって、一般市民や米兵士の命が奪われる可能性があれば、なおさらだ。
ニューヨークなどの大都市ではいまも反トランプのデモが続くが、今年1月の「ウィメンズ・マーチ」のような勢いはない。「反対すること」が日常化している。メディアも健闘しているが、一時のような批判的なトーンは薄まっている。
危うい政権運営が常態化しないことが望まれる。(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2017年5月1-8日合併号